〜始まり〜

ずっと探しているものがある。

翼の少女の記憶。

小さい頃から母親に聞かされてきた物語。

「…その少女は、私たちが生まれるよりもずっと昔から、
たった独りで空の上から誰かが迎えにくるのを待っている…」

マリオは立ち寄ったとある国で、悪漢に
拉致されていたピーチという娘を助けた。

「あの…ありがとうございます。お名前は…」
「ラーメンセット一つ」
「え?」
「腹減った…。頼むなにか喰わせてくれ…」
「あ、ええ、構いませんけど…ラーメンセットって?」
「ラーメンとキノコだ」
「ああ、それなら作れます。ちょっと待っててくださいね」

「…それで、マリオさんはなぜ翼の少女を探しているんですか」
マリオはちょっとタンマと手で合図し、お茶で口の中を流した。
「わからん…、ただ、もし見つける事ができたなら、
母親との約束は果たされる。母には…何もしてやれなかったから」
「…」
「…」
「ひとつだけ、手がかりがあります」
「?」
「わたしの一族はある『道』を封印しています。私も詳しくは聞かされて
いませんが、その道は遥か天空まで伸びているそうです」
「案内して…くれないか」

この国の城の地下へ案内された。ピーチは大した立場にあるらしい。
石造りの地下道を歩いて行く。
「カビ臭いな…」
「苦手ですか?」
「いや。昔配管工のバイトをしていたことがある。
懐かしいにおいだ」
「ふふ。あ、着きました。ここです」
目の前にとても大きな大木。それに寄り添うように群生する多様な植物。
地下水のみでこんな暗闇でも生き続けている自然の力に、正直感動を覚えた。
その大木の根元に突き刺さるように、古びた土管が横たわっていた。
シダや苔で緑色に染まっている。入り口とも言うべき穴は木の根や植物で
ふさがれている。まるで何かを護るように。
「封印されているとはいいますけど、実際はいままで誰も開けられなかった
んです。この湿度では火もおこすことができませんし、斧でもこの脈々とした
根の生命力は断ち切れませんでした」
「あれを使ってみるか…ラーメンセットのお礼だ。
ひとつ俺の『法術』を見せてやろう」
マリオは植物をひとふさ掴み、引き抜いた。そして念じる。すると、暗闇
の中にマリオの手が浮かびあがった。
「え…?」
ピーチはおもわず自分の持つランプとマリオの手を見比べた。
マリオの手の方が明るい!握った手を開いた瞬間、ボワッという音
と共に手の中の植物が燃えていた。
「…すごい」
「母親やその前の代はもっと色んなことができたらしい。
俺が習得できたのはこの『植物を燃やす力』だけだ。おそらく
この『法術』も、俺の代で最後だろう」
マリオは同じように入り口を塞いでいた木の根を燃やした。
1000年間開くことのなかった入り口は今、開いた。
「魔物の気配がするな…それじゃ俺は行く。ピーチ、色々ありがとう」
「そんな、もう会わないみたいな…必ず無事に帰ってきてくださいね」
マリオは微笑むと踵をかえし、暗い虚空へ向けて旅立っていった。
吸い込まれるようにして姿は消えた。

「どうか…無事で…」
あたりは大樹の生命の営みと祈りに包まれた。